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研究経過



2016年度(平成28年度)


(課題1)国際金融市場に関わるリスク:
通貨リスクと国際貿易の関係を理論・実証の両面から分析し、通貨のボラティリティが通貨統合で域内の貿易の品質に変化をもたらしたことを発見した。為替レートの変化が企業の特恵関税スキームの利用に与える影響に関して理論的・実証的に分析し、輸出国通貨の輸入国通貨に対する減価(増価)は自由貿易協定の利用率を上昇(低下)させることを明らかにした。決済通貨の選択が企業の国際取引に与える影響に関して理論的、実証的に分析を開始した。

(課題2)グローバルな環境問題
グローバルな環境問題が生じているような開放経済において貿易政策や環境政策がどのような資源配分効果や厚生効果を持つかについて、失業を明示的に考慮したハリス=トダロモデルを用いて分析した。健康を損なうリスクのある食品問題について、企業がそのような食品を生産する誘因やそのような食品が貿易される理由について理論的に分析した。

(課題3)国際的な生産ネットワークに伴うリスク
企業活動のグローバル化により雇用が不安定化するという指摘の検証を進めた。輸入時の通関の遅れが輸出に与える影響に関して理論的・実証的に分析し、輸入時における港湾や税関での遅延が、企業の輸出頻度を低下させていることを示した。また、輸入関税の低下が、当該国の輸出時における輸送費を低下させて輸出額を増加させることを理論的に示し、実証分析による確認に取りかかった。

(課題4)大規模災害リスク
フィリピンの米市場において、自然災害などのリスクやショックが価格に与える影響を分析し、輸送インフラの質が重要な役割を果たすことを発見した。さらに、法整備の未発達な途上国においては雇用者と労働者との間の信頼関係が生産活動にとって重要な役割を果たすため、親族以外の人物を雇用することのリスクが高く、そのことが企業拡大を抑制している可能性があるという新たな知見を得た。


2015年度(平成27年度)


(課題1)国際金融市場に関わるリスク:
バブルが崩壊して救済政策を必要とする場合、それらが投資や経済厚生に及ぼす影響を詳細に分析した。直接投資研究で情報の非対称性など現実的な状況を加味すると、過剰な直接投資獲得競争が行われる可能性を示した。韓国ウォン安は競争力強化に繋がらないとの通説に対し、ウォン安が韓国製造業の競争力向上に寄与したことを発見した。97−98年の韓国の通貨危機・金融危機、97−98年の日本の金融危機が生み出した厚生水準低下のコストなどの諸研究を取り纏めた。

(課題2)グローバルな環境問題
国際輸送と国内輸送の両方からそれらの輸送距離に比例して汚染が発生するような開放経済モデルを構築し、最適な貿易政策や環境政策について理論的に分析した。地球温暖化対策として、企業への排出税と排出割当を新経済地理学のモデルを用いて比較し、炭素リーケージに繋がる企業の汚染回避行動について理論的に分析した。

(課題3)国際的な生産ネットワークに伴うリスク
グローバル・ヴァリュー・チェーンへの参加の度合いによって、ティア構造に整理し、各ティアにおけるリスク要因、それを克服するための政策パッケージについて検討した。紛争や暴力などの安全リスクが国際生産ネットワーク形成へ与える影響を分析するため、米墨間貿易取引データとメキシコ麻薬抗争の被害データを収集した。

(課題4)大規模災害リスク
タイの洪水が在タイ日系企業の調達行動に与えた影響を分析し、タイに進出間もない被災企業と古くから進出している被災企業の調達パターンの相違を発見した。個人レベルのデータを用いて、東日本大震災前後の幸福度の変化、及び、補償額の大きさを定量的に分析した。アフリカにおいて零細農家が利用可能なマイクロクレジットを充実させることが天候や市場リスクによる食糧自給問題の解決策である緑の革命の実現において有効であることを明らかにした。


2014年度(平成26年度)


(課題1)国際金融市場に関わるリスク:
グローバル金融市場の影響について、主に金融市場の発展とグローバル化が所得分配に与える影響について研究を行った。その結果、グローバル化が所得分配に与える影響及び、その際のリスクについて一定の知見を得ることができた。また、国際金融市場のリスクが企業の特恵関税スキームの利用に与える影響に関して分析を行った。

(課題2)グローバルな環境問題
貿易に伴う国際輸送と国内輸送から汚染が発生するような2国からなる開放経済モデルを構築した上で、輸入国における貿易政策あるいは環境政策が資源配分や経済厚生に与える影響を分析し、最適な政策について考察した。とくに、貿易政策や環境政策が通常の効果と異なる可能性があることを確認した。また、汚染規制によるリスク回避で汚染集約的なアウトソーシングがされていることを実証研究にて明らかにした。

(課題3)国際的な生産ネットワークに伴うリスク
企業の海外直接投資に伴い雇用が失われるリスクがあるという指摘の妥当性を実証的に検証し、海外の労働と日本国内の労働との代替関係は、極めて小さいことを確認した。また、地理的な距離が1つのリスク要因として働きうることを念頭に置きながら、電気機械と輸送機械の生産ネットワークが東アジアと北米の間でいかに展開されてきたのかを検証した。さらに、対外リスクの企業間取引関係への影響を分析するため、墨米間繊維貿易データを整備し、中国輸出台頭の米墨間企業取引関係への影響を分析した。

(課題4)大規模災害リスク
自然災害・人的災害が人々の生活に与える影響、様々な市場・非市場メカニズムの保険機能について分析するため、分析の基礎となる自然災害・人的災害のクロスカントリーデータの収集・整理を行った。また、阪神大震災後の企業の撤退リスクをサバイバル分析にて計測し、建物被害やインフラ被害がリスクを高めることを明らかにした。

        
  • 科研概要(採択時
  • 科学研究費補助金基盤(A)「グローバル経済におけるリスクの経済分析〜国際貿易論の視点から〜」(継続課題)の研究経過はこちらです。