大学に対する社会的要請の制度的な側面について(2014年10月27日)


(1)大学に対する社会的要請について、現在の動向に直接つながる源は、2014年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略:未来への挑戦」、いわゆる成長戦略の綱領である。その2-3を中心に大学への要請が具体的に記述されている。この綱領の大きな特徴は、すべての政策項目について、その進捗を key performance indicator (KPI)で測るという経営手法が導入されているところである。もちろん、大学改革についても、KIPが具体的に列挙されている。

(2)2012年春に始動したグローバル人材育成推進事業は、大学改革が成長戦略の一環として位置付けられる動向を先取りしているといえる。2012年3月28日の議事概要の冒頭にも、事業の効果測定という点が委員から強調されてる。

(3)文科省の国立大学改革のウェッブページでも、大学改革が「日本再興戦略」に動機付けられていることが明示的に述べられている。

(4)国立大学改革の嚆矢的な役割を果たしたのが、文科省が各国立大学にミッションの再定義を要請したことである。

(5)他の大学と同様に、一橋大学のミッションの再定義でも、その最後の項目である【その他】に「全学的な機能強化を図る観点から、18 歳人口の動態や社会ニーズを踏まえつつ、学部・大学院の教育課程及び組織の在り方、規模等の見直しに取り組む」と約束している。

(6)上述の流れの最も象徴的な動きは、2014年度に公募されたスーパーグローバル大学等事業のスーパーグローバル大学創生支援である。(準備会合有識者名簿プログラム委員会委員名簿

(7)スーパーグローバル大学創生支援の構想調書は、学術振興会のウェッブページで閲覧できる。

(8)関連する動きとしては、国立大学法人評価委員会が2014年8月4日に「国立大学法人の組織及び業務全般の視点」に関する基本的な考え方を公表している。そこには、①「ミッションの再定義」を踏まえた組織改革、②教員養成系、人文社会科学系は、組織の廃止社会的要請の高い分野への転換、③法科大学院の抜本的な見直し、④柔軟かつ機動的な組織編成を可能とする組織体制の確立、が掲げられている。

(9)「社会的要請の高い分野への転換」を具体的にイメージする材料として、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」で冨山和彦委員が2014年10月7日に提出した資料「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」が示唆的である。世界のトップクラスの国内大学以外は、すべて職業訓練学校へ転換すべきことを提言している。

(10)冨山委員が提出した資料の半分のページは、同委員が2014年9月19日に総理臨席の「まち・ひと・しごと創生会議」に提出した資料と重複している。大学改革は、成長戦略の一環とともに、地方創生の一環にも位置づけられるようになりつつあることを示唆している。