教員紹介

大月 康弘(おおつき やすひろ)

主な研究テーマ

(1)ビザンツ帝国の経済社会分析
比較国制史、比較社会経済史の観点から、ビザンツ帝国の経済社会構造分析を行っている。同社会の特質を国家・社会構造比較の観点から分析し、「西欧」世界の特殊性との比較において把握しようとしている。

(2)西洋中世世界の比較社会構造研究
「近代社会」を生んだ西洋世界の母胎としての中世世界の把握を試行している。この作業は、現行の「世界標準」としての近代的価値体系、諸制度、国家権力のあり方(国家と市場の関係を含む)を、歴史個性的に把握する上で有意な試みと考えている。

(3)地中海文明論
「近代西欧」世界を生んだ母胎としてのキリスト教世界は、地中海を舞台として展開された。この認識に立って、イスラム世界をも含む地中海文明論を構想している。

(4)比較経済史方法論
「近代経済社会」を分析するための学として発達した経済史は、「前近代」また非西欧世界の経済社会分析にどの程度適用可能か。この関心のもと、「市場」「産業」「国民国家」等の近代的諸規準に加えて、「互酬」「再分配」(権力機構論)等にも注目しながら経済社会分析の方法について検討している。

講義およびゼミナールの指導方針

「経済史入門」では、経済史研究の知的可能性を紹介している。19世紀以来の経済実証研究の方法態度(分析主題・方法・概念等)を類型的に整理・紹介し、それぞれの射程と限界について考察している。「経済史A」は、「近代社会」の構造的特質を解説する場である。ただ、その個性的理解を促すために「前近代社会」を分析し、その分析手法を「近代社会」論との比較の観点から論ずる場としても位置付けている。「文明史」も、やはり「近代社会」を比較社会類型論の立場から理解することを目標とする。そのために、「近代」を生んだヨーロッパ前近代社会を、その政治構造をも含めて論じている。「基礎ゼミナール」は、具体的な歴史学・経済史研究の方法について導入的に例示することを目標とした少人数の講義である。20世紀の国際関係史と地域研究の双方に関わる理論的・実証的論文・文献、また最近では、中世ヨーロッパ・地中海世界の構造的理解に関わる文献を講読し、議論している。

一橋大学の歴史は、近代日本の経済社会発展における本学の役割、また、各時代における高等実業教育の編成について、国際比較の観点から研究・教育している。

学部ゼミナールでは、ヨーロッパ・地中海世界の経済社会の形成・構造に関する英語文献を講読し、大学院ゼミナールでは、参加者の関心に沿った修士論文、博士論文の作成に向けた助言を与えている。いずれのゼミでも、最新の研究書・論文とともに、過去の古典的文献にも注意を向けるよう指導している。現実の政治・社会動向に規定された研究史の批判的検証を行い、自身の問題関心を彫琢してもらうためである。

ゼミナール関係では、以上と並行して、地中海地域を研究フィールドとする学生数名を対象に、ギリシア語、ラテン語史料の講読を行っている。

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