専門は、実験経済学、行動経済学。主に、意思決定や時間選好の研究に取り組んでいます。
(1)時間選好に関する経済実験
人は、将来得られる大きな利得よりも、少ない利得を現在得ることを好む傾向があります。時間選好とは、現在と未来のトレードオフに直面する個人の意思決定にかかわる選好のことです。近年、経済学ではこの時間選好に関する研究(貯蓄・投資行動、退職や医療行為の意思決定、依存症の治療など)が進んできました。私は、利得発生の遅延を現在時点でのリスクに置換する経済実験を行い、リスクと遅延の正の相関を確認しました。このようにリスク選好と時間選好の両方が同時に働く意思決定をテーマに研究を続けています。
(2)アイトラッキング(視線)
人の意思決定と視線には密接な関係があります。したがって、視線(どこを見ているか)を観察することで、その人の意思決定過程を推測することができます。また、逆に視線を誘導することによって、間接的に意思決定に影響を与えることもできるのです。この相互関係についての実験を行い、データを分析しています。
学生の皆さんには、講義を通じて「教養としての経済学」を身につけてほしいと考えています。経済学は必ずしも明日の生活に役立つものではありません。すぐに景気予測ができるようになるわけではないですし、卒業生が全員、エコノミストになるわけでもないでしょう。しかし皆さんが将来どんな職業に就くとしても、経済学の考え方の枠組みは思考の助けになります。
私のゼミでは、学生1人1人が興味を持っている社会問題や経済事象について、経済学的の枠組みを使って理解を深め、データや事例を使って説得的な主張を展開することを目指します。ほぼすべての事象について、関連する経済学の先行研究があります。それらを学ぶことで、物事を分析的にとらえることの厳格さや、その意義または限界について、よく理解できるはずです。それこそ大学で学ぶべきことだと私は信じています。そして、ゼミナールは「日々新たな発見と感動を得られるような教育」の場でもあります。将来は社会や組織をリードする学生たちが、経済学だけにとらわれずに、広く文化教養に触れておくことができるように、経済学以外の読書や文化活動もゼミナール活動のなかに取り入れています。